いよいよ始まる「電力自由化」は何が変わってどう便利になる?

2016/02/01
 最近なにかとよく耳にするようになった「電力自由化」という言葉だが、2016年4月からは、電力会社を自由に選べるようになるらしい。言葉自体は聞いたことがあっても、その中身を正確に理解している人は、まだ少ないのではないだろうか。

 ニュースなどでは、「どこどこの企業とコラボして、これだけ電気料金が安くなる」といったような喧伝がなされているが、実際のところ電力自由化することで、いったい何が変わって、どう便利になるのだろうか? そして本当に料金は安くなるのだろうか?

 月々のスマホ料金に光熱費など、とにかく節約できるのであればなんでも試してみたいと思う人は多いと思うのが人情というもの。電力自由化について、現時点でわかっていることを踏まえつつ、解説していきたい。

◆電力自由化は海外ではすでに実施している国も

 まず、電力自由化とは、そもそもどういうことなのだろうか。これに関しては、もっと正確に表現するなら「電力小売りの自由化」ということになる。これまでは全国10社の地域電力会社(一般電気事業者)がその地域で電力を販売(供給)していたが、今後は「新電力」と言われる電力会社(特定規模電気事業者)も市場に参入し、電力を販売(供給)できるようになることとを意味する。

 どういうことかというと、関東圏に住んでいる人は東京電力でしか電力が買えなかったが、2016年4月以降であれば、それ以外の電力供給を展開する事業者から自由に買えるようになる。つまり、選択権が消費者に移るというのが、今回の電力自由化と言える。

 日本では2016年4月から始まる電力の自由化だが、ヨーロッパをはじめとした海外では先行して電力自由化が実施されている国もあり、たとえば、ドイツやイギリスは1998年に、イタリアやフランスはは2007年に電力市場を自由化している。

 なかでも電力自由化の先進国であるイギリスでは、自由化以降、通信業界をはじめ多彩な事業者が参入し、各社が自由に付帯サービスや価格設定を行い、自分の生活や考え方にマッチしたサービスの電力会社を選ぶという状況になっているようだ。

◆電力の自由化で料金・サービス面で選択肢が拡大

 電力自由化は厳密には2000年から始まっていて、比較的大きなビルや工場など対象となる建物は限定されていたが、新規参入した電力会社から電気を購入することが可能になっていた。以降、対象となる建物が増え続けていき、今回、ついに自由化の対象が一般家庭レベルにも拡大されることになったのだ。これにより消費者は、携帯やスマホを選ぶように電力会社すら選べるようになる。

 自由化に伴って市場に参入する企業数はどんどん増えていき、その業種も実に多種多様。各業種の特徴を生かした割引プランなども続々と発表されている。こうした価格競争が激化することで、消費者である我々は豊富な料金メニューやサービスから選ぶことができるようになるのだ。

 電気料金プランを比較して選べることで、月々の使用料金の節約といった恩恵を受けられるほか、ニュースなどで目に付くのが“セット割引”。通信会社であればスマホの利用料金やインターネット回線とセットでお得になる電気料金プランが考えられ、実際にKDDIは電気料金に応じて最大5%がau WALLETポイントとしてキャッシュバックされるという「auでんき」、ソフトバンクなら電気と携帯電話に加え光回線も含めたセット割引を提供、ドコモも電力会社とのポイントサービス提携のほか、独自の販売プランも検討していたりする。

 ほかにも、自動車メーカーなら電気自動車とセット料金プラン、電機メーカーの太陽光発電システムや家庭用充電装置とセットの電気料金プラン、ガス会社によるガスとのセット販売など、各社が得意とする分野と電気料金を組み合わせたプランが次々に発表され、消費者としては期待がふくらむばかりだ。

 ただし、自由に選べる分、各選択肢をユーザー自身が吟味することが重要となる。お得感を前面に押し出したフレーズに流され、自分のライフスタイルと合わないプランと契約してしまったら、結果として安くなるどころか高くなってしまう……なんてことも起きかねない。落ち着いて見極めることを忘れずに!

◆スマートメーターが電力自由化に活躍

 電力自由化に向けて設置が始まっている「スマートメーター」と呼ばれるデジタル式の電力計にも注目したい。

これまで電気料金は検針員が毎月の使用量を確認して算出されていたが、スマートメーターではインターネット回線などを使って遠隔で電気使用量を自動的に把握が可能。こうして収集したデータを基に、どの時間帯に電気を使っているかや、節電できているかが一目瞭然となり、そこから電気使用量削減のアドバイスを電力会社から受け取ったり、電気料金が安い曜日や時間帯を設定するなど、より細かい料金メニューの提供も考えられる。

 すでに日中の電気料金を高くし夜間の電気料金を安くする、平日の電気料金を高くし土日の電気料金を安くするといったプランも登場。スマートメーターが全世帯へ設置が完了するのは2024年度(予定)と先で、2016年4月時点でどれほど普及しているかは不明だが、新電力に切り替えた世帯には優先的に導入されるらしい。なお、交換には基本的に料金はかからない。

 料金面以外にも、風力や太陽光といった再生可能エネルギーを利用した電力会社と契約することで、間接的にエコ活動に貢献するなんてことも。消費者が電力会社を選べることで、発電のあり方自体も変わってくるかもしれない。

 スタートまでまだ少し時間があるので、じっくりと自分に合った電力会社を選びたい。どのように選ぶのがいいのかなどは、また別の機会に触れようと思う。

※記事内容は2016年1月現在の情報を基に作成。

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