最近、なにかと耳にする「マストドン」とは?

「マストドン」をご存知だろうか? なにやら怪獣の名前のような不思議なワードが、各種SNSで先月ごろより話題となっている。「マストドンを導入してみたが、これは革命かも!?」「ほしい情報だけ手に入るからもうほかのSNSへ戻れない」など、もしかしたらこれからのSNSをリードするかもしれない「マストドン」について解説してみる。
目次
◆ 基本は短文投稿型の“Twitter型SNS”
4月中旬「マストドン」という単語がWeb上を駆け巡った。なんとなく言葉だけ目にした人もいるかと思うが、何のことだかわからないままスルーしてしまっている人も多いだろう。
「マストドン(Mastodon)」は、2016年10月に公開された短文投稿型のSNSである。Twitterのように指定された文字数でブログを投稿し公開できるというものだ。と、これだけ書くと何が画期的なのか、なぜ話題になったのかよくわからない。
マストドンが他のミニブログと大きく違う点は、オープンソースのフリーソフトウェアであるというところだ。
Twitterであれば、ユーザーは投稿するために必ずTwitterのサーバーへ登録しなければならない。だが、マストドンのソースは無償で一般に公開されており、知識さえあれば誰でも自分だけのサーバーを作って、短文投稿型のSNSを運営することができるのだ。
◆投稿ジャンルが細かく決められているため共通の好みの人を見つけやすい
現在、マストドンのサーバー(「インスタンス」と呼ぶ)は500以上確認されており、まだまだ増殖中だ。
そのためマストドンには、かなり専門的なインスタンスが多数存在している。ほかのSNSであれば認証した相手の投稿しか追いかけることができないため、自分の興味のあるジャンルの投稿を探して能動的にフォローする必要があった。
ところが、マストドンではインスタンスを立てた管理者が、そのインスタンスで投稿できる話題をあらかじめ細かく指定しているため、その必要がないのだ。
また、自分が所属しているインスタンス以外のユーザーを検索できるのもマストドンの特徴。たとえば、サッカーの話題を語るインスタンスに所属しつつ、野球の話題で検索をすれば、野球インスタンスに所属しているユーザーの投稿を見ることもできると言った具合だ。
◆実際にマストドンを利用してみよう
何はともあれマストドンを利用してみよう。とはいえ「マストドン」と入力して検索するだけでは、登録画面にたどり着くことは至難の業だろう。
先にも説明したが、マストドンはあくまでフリーソフトウェアの名称だ。検索する場合は、必ず「マストドン インスタンス」などのキーワードで検索しよう。さまざまなインスタンスをまとめたサイトなどが出てくるので、インスタンスのスタンスを見比べながら、自分がどこのインスタンスに所属するか決めていこう。
初心者にオススメなのは「mstdn.jp」インスタンス。日本人が最も多く集まっているインスタンスであり、話題に縛りのないインスタンスだ。基本的な操作方法を覚えるのにはもってこいだろう。登録方法は他のSNSと変わらない。
ユーザー名を決めて、連絡用のメールアドレスとパスワードを設定すれば登録は完了だ。
マストドンの画面は主に3つの要素で構成されている。
「ホーム」……Twitterで言うところの「タイムライン」。自分の投稿と、フォローした相手の投稿のみが表示される。
「通知」……自分の投稿に対して、何らかの反応があった場合に表示される。
「スタート」……いわゆる設定画面だが、マストドンでは重要な要素である「ローカルタイムライン」と「連合タイムライン」が表示できる。
この「ローカルタイムライン」と「連合タイムライン」はマストドンを楽しむ上で重要な要素だ。同じインスタンス上に存在するすべてのユーザーの投稿が流れるタイムラインがローカルタイムラインで、連合タイムラインとは、同インスタンス上に存在するユーザーがフォローしたり、拡散した投稿が他のインスタンスの投稿含めてまとめて表示される。
見ず知らずの人々が、テレビの実況等で盛り上がっている様子が逐一眺められるのはとても楽しい。
投稿を行うには画面左にある「今なにしてる?」と表示されているウィンドウにテキストを打ち込み、「トゥート!」を押下すればOK。
「トゥート」とはTwitterでいう「Tweet」のようなもの。マストドンでは最大500文字まで投稿を行うことができる。
「トゥート!」のようにマストドンでは独自の用語が使われている。よく見かける言葉をピックアップしたので参考にしてもらいたい。
・「ブースト」……いわゆる、リツイート。特定のユーザーが発言を拡散する機能。
・「リモートフォロー」……別のインスタンスに所属しているユーザーをフォローすること。
・「CW」……Contents Warningの略。「トゥート!」ボタンの左に付いており、投稿内容が、人によって不快な内容を含むかもしれない場合にチェックを入れておく。CWの付いた投稿は、タイムライン上でクリックを行わないと全文が表示されなくなる。
◆マストドンを利用する上での注意点
以上、簡単にマストドンの利用方法をまとめたが、利用にはいくつか注意点がある。まず「ローカルタイムライン」「連合タイムライン」の表示について。ローカルタイムラインは同インスタンス上のユーザーすべてのトゥートが、連合タイムラインではそれ以上のユーザーのトゥートがものすごい速度で表示されては消えていく。
文字データだけならいいが、動画や大容量画像が埋め込まれていた場合に、モバイルデータ通信を行っていると、ものすごいデータの容量を使用してしまう可能性も。
また、他のSNSでも同じだが仲のよいユーザーを早めに見つけないと、いくら投稿しても何の反応もないまま数日が過ぎるなんて事態になってしまう。
初回起動時のホームでは「連合タイムラインを見に行くか、検索を使って他のユーザーを見つけましょう」などと書かれているが、連合タイムラインは流れが速過ぎて正直、興味ある他のユーザーを探している余裕はない。
別のSNSで仲のよいユーザーがいないか検索をかけるか、あるいは同好の士であると信じて、こちらから積極的にフォローするといったようなコミュニケーション能力が試される。
最後に最も重要なことが、インスタンスの運営は多くの場合企業ではなく、個人であるということである。企業ならばある程度の安全性は保証されているが、個人だとインスタンスの安全性は、残念ながら100%保証されない面も。
なかにはあなたの情報を手に入れようとしている悪質なインスタンス管理者だっているかもしれない……。利用はあくまで自己責任だ。
初期のSNSはその多くが招待制だった。もともとSNSとは無限に広がるネットの世界を狭く区切ることで、自分に近い人々の集まりを作る仕掛けだった。マストドンは、広がりすぎたSNSを再び閉じた仲間だけで緩く楽しもうという、SNS全体へのアンチテーゼなのかもしれない。
※記事内容は2017年5月現在の情報を基に作成。