
「BYOD(ビーワイオーディ)」とは-意外と知らないIT用語の基本
2020/06/02 掛岡 誕テレワークの拡大・浸透が進む中、さまざまなIT用語が再注目されています。
私用デバイスを企業内に持ち込み、業務に利用する仕組みを表す「BYOD(Bring Your Own Device)」も、その一例ではないでしょうか。
◆BYODとは「従業員が持つ個人用のスマホやパソコンを業務に活用する」こと
「BYOD(Bring Your Own Device)」を和訳すると、「自身のデバイスを持ち込む」といった意味になります。
要約すると、「社員の個人所有端末(スマートフォン・タブレット・ノートパソコンなど)を企業内に持ち込み、業務用途で使用・活用する仕組み」のことです。
こうした仕組みが注目され始めた背景には、スマホの普及やモバイル端末のスペック向上が要因として挙げられます。
以前はパソコンを必須としていた業務がスマホでも可能となったほか、メールやLINEなどSNSの業務活用が一般化しつつあることも大きいでしょう。
総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」によると、企業のBYOD導入割合は、やはり欧米が先行しているようです。
「各国企業が導入しているICT」を見ると、BYODを許可している割合はアメリカ23.3%、イギリス27.8%、ドイツ27.9%に対し、日本は10.5%に過ぎません。
一時期は国内でもブームになりかけたBYODですが、実際の普及はまだまだ……といったところかもしれません。
◆メリットも多いBYOD化の弊害はセキュリティ・リスク
BYODの普及が進まない要因は、やはりセキュリティ面でのリスクでしょう。
セキュリティ意識の高まりと共に、ある意味では時代に逆行する、「端末のローカル化=情報漏えいの原因」といった考え方が浸透している印象は拭えません。
契約社員や派遣社員などもデータに関わる機会が多い昨今は、個人によるデータ持ち出しが事件や事故の原因となるケースも増えています。
こうした事件・事故を防止するためには、労務管理の見直しが必須でしょう。ただし、新たなルール設定や煩雑化が働き方改革と矛盾し、思うように進められないといった側面も見受けられます。
一方、使い慣れた自己端末に情報管理を一本化することで、業務効率アップや従業員満足度(ES=Employee Satisfaction)の上昇といったメリットも。
端末を支給する必要がなければ、コストの大幅削減を図ることも可能でしょう。
◆日本で進まない企業の業務改革にもつながるBYOD
BYOD化によるリスクの削減方法として、ユーザーや端末、アプリケーションなどの各種情報を照合し、アクセス制御を行う無線LANシステムの普及も進んでいます。
無線LANシステムには管理者にスキルが要求されるものの、通信機能により端末をリモート管理できるため、端末の紛失などによる情報漏えいを防ぐことができます。
こうしたモバイル端末の管理方法は、「MDM(Mobile Device Management)」とも呼ばれます。
データのクラウド管理やVDI(デスクトップ仮想化/Virtual Desktop Initiative)などと併用すれば、さらにリスクを軽減できるでしょう。
同時に、社内ガイドラインや運用ルールの見直し・再設定、就業規則への反映など、マンパワーが必要な改革も避けられませんが、BYOD化は世界標準とも言える動向です。
BYOD市場は2022年に3500億ドル規模 (40兆円/2014年調査の4倍) まで拡大するとのリサーチ推測もあり、こうした動きに乗り遅れないように、日本国内でも早急な対応が望まれるところです。