
Appleのデジタル遺産プログラムとは|機能と設定方法解説
2022/05/20故人の遺産には、パソコンやスマホ、クラウド上に残されているデータ、ネット金融など”デジタル遺産”も含みます。AppleではiOS15.2以降(macOS 12.1 以降)、デジタル遺産機能が設定できるようになりました。近年はスマホの中に個人情報が蓄積されていくことが多く、大切な写真やデータを家族に託しておきたい方におすすめの機能です。
本記事では、デジタル遺産について、デジタル遺産機能の設定方法について解説していきます。設定を解除する方法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
デジタル遺産とは?
デジタル遺産とは、パソコンやスマホなどに残された故人のデータおよび本体を指します。近頃は故人の資産がデジタル化していることも多く、故人が設定したパスワードがわからないとデータを確認することはできません。
AppleではiOS15.2以降(macOS 12.1 以降)、指定された管理人がスマホやiPadに残してある一部のデータにアクセスできる「デジタル遺産プログラム機能」が搭載されました。
大事な家族の写真やデータを残せる機能
デジタル遺産プログラムは、故人が指定したユーザーが所定の手続きを済ませることで一部のデータにアクセスできる機能です。
指定されたユーザーは、故人の端末やクラウド上に保存されている写真や連絡先など一部のデータが確認できます。しかし、故人のデータにアクセスするには、Appleで故人のデータにアクセスしたい旨を申請し、審査を受ける必要があります。
故人のデータにアクセスするためには、以下が必要です。
・「故人アカウント管理連絡先」に指定された際に発行されたアクセスキー
・故人の死亡証明書
また、故人のデータにアクセスできる期間は、アクセス申請がはじめて承認された日から3年間に限定されます。それ以降、故人のアカウントは完全に削除されるため、必要なデータは早めに保存しておきましょう。
デジタル遺産として遺せるデータ
デジタル遺産として遺せるデータをまとめると、以下の通りです。
・iCloud写真
・iCloud Driveに保存されているファイル
・メッセージ
・メール
・連絡先
・カレンダー
・メモ
・リマインダー
・通話履歴
・ヘルスケアのデータ
・ボイスメモ
・Safariのブックマークとリーディングリスト
・iPhone、iPadなど端末のバックアップデータ
故人アカウント管理連絡先に指定されたユーザーは、iCloud等に保存されているデータが閲覧できます。ただし、Googleフォトなど別のデータサービスを利用されている場合は、デジタル遺産機能ではアクセスできません。
Apple以外の他社サービスにアクセスしたい場合は、サービスを提供している企業に問い合わせをしてデータにアクセスできるか確認してみてください。
デジタル遺産として遺せないデータ
デジタル遺産として残せないデータは、以下の通りです。
・App内課金で購入したデータ(サブスクリプション、App内の追加コンテンツなど)
・ライセンスが必要なメディア(iTunesなどで購入した音楽や映画、電子書籍など)
・支払い情報(Apple IDに登録したクレジットカード情報、Apple Payに保存してあるカードなど)
・故人のキーチェーンに保存されているアカウント情報(Wi-FiパスワードやSafariのユーザー名とパスワード、カレンダーなど)
アプリ内の追加コンテンツなどApp内課金で購入したデータやライセンスの必要なメディアは、デジタル遺産として遺せません。
また、各Webサービスのアカウントユーザー名やパスワードなどが保存されているキーチェーンも、アクセスできないデータです。大切なデータがWebサービス上にある場合は、指定ユーザーにアクセス方法や保存方法について共有しておきましょう。
iOS15.2から利用できるデジタル遺産機能
家族や友人など信頼できるユーザーがデータにアクセスするには、事前に故人アカウント管理連絡先を設定しておく必要があります。故人アカウント管理連絡先は、設定後に解除することも可能です。
故人のデータにアクセスするには?
デジタル遺産プログラムを利用するためには、故人アカウント管理連絡先にアクセスできるユーザーを登録する必要があります。
故人アカウント管理連絡先に指定するユーザーはApple IDを所持していない場合でも指定でき、年齢問わず複数人の指定もできますが、13歳以下のユーザーは故人のAppleアカウントへのアクセスを申請することができないため、指定することはできません。
日本では13歳以下ですが、この年齢は国や地域によって異なるので、必要であればこちらで確認しておきましょう。
故人アカウント管理連絡先の設定方法
もしもの場合に自分のAppleアカウントにアクセスできる「故人アカウント管理連絡先」の設定手順は、以下の通りです。
iPhone・iPad・iPod touchの場合
1.「設定」を開き、自分のAppleアカウントユーザー名をタップ
2.「パスワードとセキュリティ」をタップし、「故人アカウント管理連絡先」をタップ
3.「故人アカウント管理連絡先を追加」をタップし、必要に応じてFace IDやTouch ID、デバイスパスコードで認証すれば設定完了です
Macの場合
1.Appleメニューより「システム環境設定」を選択し、「Apple ID」をクリック
2.「パスワードとセキュリティ」をクリックし、「故人アカウント管理連絡先」をクリック
3.「故人カウント管理連絡先を追加」をクリックし、必要に応じてTouch ID または Mac のログインパスワードで認証すれば設定完了
また、ファミリー共有グループに参加している場合、グループのメンバーを追加することも可能です。
故人アカウント管理連絡先の解除方法
故人アカウント管理連絡先の解除方法は以下の手順です。
1.「設定」を開き、「ユーザー名」→「パスワードとセキュリティ」の順にタップ
(Macの場合は、「Appleメニュー」→「システム環境設定」→「Apple ID」→「パスワードとセキュリティ」)
2.「故人アカウント管理連絡先」設定の下にある、解除したい連絡先の名前を選択し、詳細オプションを表示させる
3.「連絡先を削除」を選択し、確認画面で再度「連絡先を削除」をタップ(クリック)すれば削除完了です。
個人アカウント管理連絡先から解除されても、解除したユーザーに通知は届きません。また、Apple製品を解除ユーザーが使用している場合は、相手の故人アカウント管理連絡先リストに依頼者が表示されなくなります。
デジタル遺産の問題点とは?
大切なデータを遺せるデジタル遺産プログラムですが、いくつか問題があります。
・指定相手の端末のOSが古いとアクセスキーが表示できない
・故人アカウント管理連絡先がデータにアクセスできるのは3年間のみ
故人アカウント管理連絡先は誰でも指定できますが、指定した相手の端末OSが古いとアクセスキーが表示されない可能性があります。OSが古くすぐにアップデートできない場合は、削除して再登録するか、アクセスキーをテキストや紙で渡しておく必要があります。
また、個人アカウント管理連絡先に指定されたユーザーが、データにアクセスできるのは申請の承認日から3年間のみです。3年間を超えると、故人ユーザーアカウントは削除されてしまうため、アクセスできません。
大切なデータを遺したい場合は、前もってダウンロードなど保管してもらうようにお願いしておきましょう。
もしものために設定しておくと安心
デジタル遺産プログラムを利用すれば、自分にもしものことがあっても大切なデータを信頼できるユーザーに託せます。近年はスマホやパソコンの中に写真などのデータを保存している方が多いため、万一のために備えておくと安心です。
※2022年5月時点の情報です