
「ローカル5G」とは何か?「5G」や「WiFi」との違いとは?
2020/04/15ネットワーク界で話題の最新通信規格「5G」は、皆さんも何かしらお聞きになったことがある単語でしょう。では「ローカル5G」は知っていますか? 今回は「5G」と合わせて最新トレンド・キーワードになりそうなローカル5Gについて、簡単に解説してみましょう。
◆「ローカル5G」と「5G」は基本的に同じもの?「Wi-Fi 6」との違いは?
5Gについては「5G(ファイブジー)」とは-意外と知らないIT用語の基本」でも解説していますが、「第5世代移動通信システム」というスマホなどの通信に用いられる次世代通信規格のことです。
その5Gに、わざわざ“ローカル”を付記してローカル5Gになると何が違うのか、と思われるかもしれませんが、結論を先に言ってしまうと、5Gとローカル5Gに大きな違いはありません。
基本的には「5Gの一部規格がローカル5G」だと思っておけば、おおよそ間違いはないでしょう。本来は通信事業者が展開する5Gを、企業や自治体が中心となって構築しIoTなど各分野に活用する、という考え方がローカル5Gなのです。
ちなみに無線通信の新規格としては無線LANの新規格「IEEE 802.11ax」(「Wi-Fi 6」)もありますが、ユーザーが通信時に感じるパフォーマンス面では違いはあまりありません。
詳細な違いはいくつかありますが、大きな違いの一つが、5Gはライセンスを持った通信事業者が提供するのに対し、Wi-Fi 6は利用する周波数帯がライセンスの対象にはなっていないということです。そのため、電波干渉による影響という問題が起きる可能性があります。
◆ローカル5Gは“日本独自”の通信規格
そもそもローカル5Gは世界共通の通信規格用語などではなく、総務省が提唱する日本独自のルール。まさしく“ローカル”な用語ですから、海外の知人に「local 5G」などといっても通用しないので、念のため……。
ちょっと難しい解説をすると、5Gが持つ
・高速通信(eMBB:enhanced Mobile BroadBand)
・低遅延(URLLC:Ultra-Reliable and Low Latency Communications)
・大量同時接続(mMTC:massive Machine Type Communications)
などの特徴を企業の工場内ネットワークやロボットなどに活用し、フレキシブルな生産ラインを構築する…といった利用法が、ローカル5Gでは考えられるわけです。
国内の情報通信関連企業はもちろん、東芝、パナソニック、NEC、日立といった電機メーカーなど、ローカル5Gには多くの企業が参入するとみられています。
◆防災活用にも期待が大きい「ローカル5G」
改めて、総務省が提示するローカル5Gについて要約してみましょう。
・第5世代移動通信システム「5G」を利用
・ローカルニーズに基づく小規模な通信環境の構築
・(通信事業者以外でも)無線局免許を取得可能で、免許を取得した他社システムを活用するケースも想定
これだけではイメージしにくいかもしれませんが、ロボットが動き回る無人の“スマート工場”や、危険な場所に遠隔操作の重機を導入する建設作業、無人管理可能な大規模農業経営のほか、さまざまなシチュエーションでの活用が想定されます。
近年の緊急課題となっている河川の防災対策などもローカル5Gを活用すれば広範囲の監視が可能に。人的な二次災害を防ぐという意味でも、防災面でのニーズは高まりそうです。
5Gのような高速通信規格ではインフラ整備も欠かせませんが、限定されたエリアの小規模ネットワークでもあるローカル5Gなら、こうした整備コストも抑えられます。ベースとなる5G通信網の整備が進めば、各地のローカル5Gも加速度的に普及すると考えられます。
◆「ローカル5G」の今後は……
使用する周波数帯は、未使用周波数帯域に新たな「ローカル5G帯域」を割り当てる予定です。まずは暫定的に早期割当(28.2~29.1GHz)を策定し、条件が整い次第、4.5GHz帯200MHz/28GHz帯900MHzを割り当てることが決まっています。
その際には当然、公共業務用システムなど既存の無線局とも帯域調整しなければなりません。土地所有者が“免許人”となるローカル5Gの原則も、さまざまな法解釈・法規制が必要となるはず。こうした制度化が急ピッチで進められているものの、普及にはまだ数年かかるでしょう。
とはいえ、今後は民間企業だけでなく自治体や大学、各種団体などの参入も見込まれています。2023年度までには100以上の企業や団体にサービス提供を目指すとされており、ローカル5Gが当たり前になる世の中も遠くはなさそうです。
※2020年4月時点の情報です。